僕の曲はどうも「ステレオ感」が足りない気がするなー。曲に広がりを出すにはパンを左右に振るだけでいいのかな…?
今日はこんな疑問に答えます。
ミキシング段階で、ステレオ感の調整をあまり意識したことがないって人は結構いるんじゃないでしょうか?
僕も音楽制作を始めたばかりのころは、
「とりあえずパンを適当に左右に振ってみる」
「ステレオイメージャーなどのプラグインで、とりあえず色んな音を広げておく」
というように適当にやっていたので、あまりステレオ感が調整されていない、つまらないミックスになりがちでした。
今回は、僕が実践してきたもので役に立った方法や、ステレオイメージの考え方について紹介していこうと思います。
この記事でわかることは、次の通りです。
- ステレオとモノラルの違い
- 自然なステレオ感を出すためのテクニック
- ステレオの処理で気をつけること
今まで「ステレオ感なんて全く気にしていなかった…」という人も、これから紹介するテクニックや考え方を使って、魅力的なミックスを作ってみて下さい。
ステレオイメージとは?
まずはステレオイメージを考える上で大切な、「モノラル」と「ステレオ」の違いを理解しましょう。
- モノラル = 1つのスピーカーで表現される音
- ステレオ = 2つのスピーカーを使って表現される音
スピーカーが2つあれば、モノラルなのね。
いや、スピーカーの数だけで判断しちゃいかんぞ。
ちょっと間違えやすいところですが、スピーカーが2つあっても、それぞれのスピーカーから全く同じ音が出ていれば「モノラル」です。
ステレオ音源というのはスピーカーが2つあることが絶対条件ですが、それぞれのスピーカーから微妙に違う音が出ることによって、左右の広がりを表現しています。
この「左右から微妙に違う音が出ている」というのが重要で、ステレオイメージを調整するテクニックにはこれを応用した方法がいくつもあります。
具体的なテクニックはあとで見ていくとして・・・
ここでは「M/S(Mid/Side)」の考え方についても、少しだけ触れておきます。
これはEQ処理などで使うので、覚えておきましょう。
- Mid = ミッド(モノラル成分)
- Side = サイド(ステレオ成分)
真ん中の音(モノラル成分)のみを抽出したものを「Mid」、左右の広がり(ステレオ成分)のみを抽出したものを「Side」と呼びます。
M/S処理という方法を使えば、これらを別々にEQなどで処理できるのですが、
例えば・・・
- 左右に広がりすぎたベースの『Side』のみをEQでローカットする
- ボーカルの芯を残したまま広がりを出したいので、『Side』のみEQで高音をブーストする
といったことができるので、とても便利なんですよね。
このテクニックも、次で詳しく紹介していきます。
ステレオ感を出すための9つのテクニック
ここからは、ステレオイメージを調整するためのテクニックについて見ていきます。
気になったものから、自分のトラックに使ってみて下さい。
マイクロシフトでステレオイメージを広げる
マイクロシフトとは、左右の音のピッチを微妙に変えることでステレオ感を出す手法です。
これはDAWを使って自分で行うこともできますが、「MicroShift」などのプラグインを使えば、簡単にマイクロシフトの効果が得られます。
ハース効果を使ってステレオイメージを広げる
このブログでも何度か紹介している「ハース効果」ですが・・・
これはモノラル音源を左右2つに分けて、片側にディレイをかけることでステレオ感を出すテクニックです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
モノラル音源をステレオ化する
さっきのハース効果を使ってもモノラル音源をステレオ化できますが、他にも方法があります。
ステレオ音源とは「左右から微妙に異なる音」が出ていれば良いだけなので、例えばモノラル音源をコピー&左右にパンニングして・・
- Lチャンネルの2k, 4k, 6kをEQでブーストする
- Rチャンネルの2k, 4k, 6kをカットする
というEQをかければ左右で音の違いが出るので、ステレオに聞こえるようになります。
これはどの周波数と決まっているわけではないですが、大事なのは「左右で微妙な違いを出す」ことです。
ステレオイメージをセクションごとに変化させる
オートメーションを使って、
イントロはモノラル → サビで一気にステレオ感を出す
という風に処理すれば、サビが一気に盛り上がるように感じます。
ステレオ成分が多すぎると、曲がごちゃごちゃしてしまいがちなので、重要なパートにだけステレオ感を与えるという方法はけっこう使えます。
ハードパン(LCRパンニング)を利用する
Chris Lord-Algeという著名エンジニアも、よく使っている手法だそうです。
LCR(レフト・センター・ライト)という3点のみに楽器を配置する方法で、パンはセンターか左右振り切りのみ!
かなり男らしいミキシング手法ですね。
楽器の定位はハッキリしますが、センターと左右に音の隙間ができがちなので、個人的には「LCRパンニング + LCRの溝を埋める少量のパンニング」がおすすめ。
MS処理でステレオ成分をコントロールする
「ステレオイメージとは?」でも紹介したMS処理ですが、Mid/Sideを別でコントロールすることで、ステレオ成分を細かく調整することができます。
こちらに詳しい方法を書いているので、興味がある人はぜひ。
モノリバーブ・モノディレイを使う
空間を表現したいけど、曲中にステレオ成分が多すぎる!
そんな時は、ディレイやリバーブをモノラルで使いましょう。
奥行きなどが表現できて、かつミックスのステレオ領域を節約できます。
時にはステレオ音源をモノラル化する
これもミックスのステレオ領域を節約する方法です。
あと、左右に広がり過ぎた音は存在感がどうしても失われがちなので、モノラル方向に寄せて存在感を出すという意味もありますね。
完全にモノラル化しなくても、DAW内蔵のステレオイメージャーなどでちょっとだけステレオ感を狭めたりしても良いですね。
お気に入りの音源のステレオイメージを確認しよう
ステレオイメージを解析するアナライザーなどを使って、好きな音源のステレオイメージを確認してみましょう。
「自分の曲は、左右の広がりが全然足りないじゃないか!」と気づくかもしれません。
無料の「Ozone Imager」などを使っても、ステレオイメージを確認することができますよ。
ステレオ処理で気をつけるべき3つのこと
次にステレオイメージの処理で、気をつけるべきことを3つ紹介していきます。
常にモノラルミックスを意識する
ミックスの途中では、常にモノラルにして確認するようにしましょう。
これはDAW内蔵のプラグインで簡単に行うことができます。
ステレオ感を調整するプラグインやテクニックを使うと、モノラルで聴いた時にかなり変な音になってしまうことがあります。
モノラルでもしっかりミックスができていないと、スタジオ以外の場所で聴いた時にひどい音になってしまうので、これはめちゃくちゃ大切です。
パンは大胆に
さっき紹介したLCRパンニングまではいかなくても、パンを振る時は大胆に振ることをおすすめします。
センター付近で細かいパンニングをしていると、センターの音の輪郭がくっきり出てきません。
なので、センターに配置された音源を目立たせるためにも、なるべくセンター付近でのパンニングは少なめにして、重要なトラックのためにスペースを空けておくのが良いでしょう。
マスターバスでのステレオ処理は最小限に
ステレオ処理のテクニックやステレオイメージャーをマスターバスで使ってしまうと、ミックスが崩れやすくなります。
マスタリング用に作られたプラグインなら問題ありませんが、「Waves S1 Stereo Imager」などのステレオイメージを広げるようなツールを使うのは、なるべく各チャンネルごとに行いましょう。
まとめ
以上、ステレオイメージに関する知識やテクニックを紹介してきました。
ステレオイメージの処理でどのくらいミックスが変わるのかは、こちらの動画を観てみるとわかりやすいかと思います。
この記事で紹介したいくつかのテクニックも解説されているので、興味がある人はぜひご覧ください。
この記事が、みなさんの役に立てば嬉しいです。