UVI「Dzmo」| 現代に蘇る先鋭的すぎたビンテージシンセ

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今日ご紹介するのは、ちょっとマニアックなソフトシンセ「Dzmo」です。

Dzmo – UVI

80年代後半〜90年代前半に発売の革新的な3つのデジタルシンセが盛り込まれたUVIの「Digital Synsation volume 2」というバンドルに入っているシンセの1つで、ビンテージ感たっぷりのサウンドをソフトシンセで気軽に楽しむことができる製品。

この中でもDzmoのもとになったデジタルシンセ「Fizmo」は、「トランスウェーブシンセシス」というウェーブテーブルシンセシスに似た技術を使って、独特の音を作り上げることができました。

ウェーブテーブルシンセシスは、Serum、Massive、Pigmentsなどの人気シンセにも使われている方式ですが、ループポイントが1つのウェーブテーブル方式に対して、トランスウェーブ方式ではいくつものループポイントを循環して素晴らしいテクスチャーを作り出すことができます。

48ボイスという脅威の発音数で、オーガニックなサウンドを得意とするシンセです。

金属っぽいサウンドから複雑に絡み合う雄大なサウンドまで、幅広い音作りができそうなシンセですね。

UVIの製品ページには、Fizmoについて以下のように紹介されています。

ベースモデルは、“トランスウェーブ”で知られるデジタルシンセのダークホースです。クリエイターマインドを刺激するシンセの中でも頂点に近い機種です。すでに事業を終えたメーカーが最後に力を注いたモデルとしても知られ、当時の技術とアイディア、そして情熱が宿っていました。しかしながら、リリース時は対抗モデルに対しての欠点のみが大きく取り上げられ、その真価を知る者のみが手にしました。現在では、2000ユニット未満の生産台数が、このカルトモデルの価値を引き上げています。

https://www.uvi.net/jp/vintage-synth/digital-synsations-vol-2.html

Fizmoについてのより詳しい解説は、Sound on Soundの記事がとても参考になるので、気になった方はこちらを読んでみてください。

参考: Ensoniq Fizmo – Sound on Sound

そもそも、なぜ僕がこんなマニアックなシンセに興味を持ったかというと、僕の大好きなアーティストJon Hopkinsが最新アルバム「Music for Psychedelic Therapy」で使用していたから。

なんでも、アルバムの1曲目(個人的に大好きな曲です)のアルペジオのような音色は、Fizmoのプリセットから生み出されたとのこと。

異世界に飛んでしまいそうな素敵な曲ですね。

「この素敵な音色はFizmoというシンセで作られているのか!」と、実機を調べてみるとReverbで100万円ほどで売られていました・・・

とても買える金額ではないのでがっかりしていたところ、UVIからプラグインとして販売されていたのでさっそく使ってみることにしました。

UVI製品といえば、Toucheに付属している「UVI Workstation」しか使ったことがないのですが、これもかなりいい音が出るのでDzmoへの期待が高まります。

さて、実際にDzmoを使ってみたのですが、感じたことは3つあります。

  1. 80年代〜90年代のあの音色、Fizmoらしい独特な音色が簡単に出せる
  2. 現代の音楽にマッチさせるならEQなどを使った調整が必要かも
  3. 細かい音作りには向かず、プリセットを中心に使うべし

まずプリセットをざっと読み込んでみるだけでも、THE 80年代なサウンドがたくさんあって面白いです。個人的にはパッドサウンドがかなり好みで、アンビエントの制作に活用できそうな音でしたね。

トランスウェーブシンセシスという特殊なシンセシスによって生み出されるサウンドは、他のシンセではなかなか再現できない複雑で有機的な音を奏でてくれます。

ただ、80年代の音を再現しているためなのか、音が丸くて少しぼやけたように感じたので、現代的なシャキッとしたサウンドが好みの人はちょっとしたEQやエフェクトで音を立たせる必要があるかもしれません。

試しにUAD「A800」やSlate Digital「VTM」などのテープエミュレーター、Maag「EQ4」を使ってなんとなく調整してみると、これが良い感じにはまって音がグッと前に出てくれるようになりました。やり方はいろいろありますが、現行のシンセとは違ったクセのあるサウンドなので、自分の思う音になるよう調整して使うのが良いでしょう。

最後に音作りに関してですが、オリジナルのFizmoについているモジュレーションノブは、ソフト版にはついていません。

エンベロープやエフェクトの簡単な調整はできますが、そもそも実機のFizmoもアナログシンセのように色んなツマミを駆使して音作りをするような作りにはなっていないようで、Dzmoではプリセットの音をそのまま使うか必要に応じて外部エフェクトで加工するのが良いと思います。

楽曲のポイントとなる部分で、アクセントとして使用するのが良さそうですね。

こんな感じでDzmoという少し変わったシンセを紹介しましたが、Dzmoが入っているバンドル「Digital Synthation 2」には他にも2つのビンテージシンセが入っており、ここらへんも珍しい方式の90年代シンセサイザーを再現したソフトとなっています。

90年代に生まれた独特なサウンドをお求めの方は、こういった、ひと味違ったシンセを導入してみるのはいかがでしょうか。

Digital Synthation 2 – UVI

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