今日はハウス, テクノ, EDMなどで重要な「キック」の音作りに関するTIPSを紹介していきます。
アーティストは、現場で使えるキックを作るために様々な工夫をしていますが、実際どのような方法で音を作ったり加工したりしているのでしょうか?
キックの作り方については、多くのサイトやYouTubeなどで解説されていますが、この記事ではキックを作る時に役立つ18のアイデアをズラッとまとめてみました。
とりあえずチュートリアルを参考にキックを作ってみたものの、「いまいち納得のいく音にならないな」と感じている人は、ぜひ以下の方法を試してみてください。
理想のキックを作るための19の方法
それではさっそく紹介していきますが、今回はそれぞれのテクニックの具体的な方法や手順までは解説していません。
「こんな方法もあるんだ〜」と思いながら、見ていただくといいかと思います。
気になる方法があれば、ネットにチュートリアルもたくさん転がっているので、ぜひ詳しく調べてみて下さい。
1. レイヤーして厚みをだす
まずは音をいくつか「レイヤー」する(重ねる)ことで、キックに厚みをだすという方法。
これは何種類かのキックのおいしい部分だけを取り出し、理想のサウンドをつくるというものです。
動画でも紹介されていますが、よく見かけるテクニックとしては、
- EQを使ってあるキックの低域を抜き取る
- 別のキックの高域をEQで抜き取る
- コンプなどで二つの音を馴染ませる
このような方法ですね。
アーティストの中には「低域」「中低域」「中高域」「高域」という4つのキックのおいしいとこどりで、オリジナルのキックを作ってしまう人もいます。
たくさん重ねれば良い音になるというわけではありませんが「このキックの低域は好きだけど、高域がちょっと明るすぎるんだよな…」なんて時に、試してみると良いでしょう。
2. サブキックを入れる
これもレイヤリングに近いですが、ちょっと低域が足りないキックに40〜50Hz以下の「サブキック」を入れてあげると、もとのキックの雰囲気を生かしつつキックの存在感を高めることができます。
低音成分が多いキックサンプルにEQを加えて使っても良いですし、シンセで作ってしまうという方法もあります。
もしEQでサブの存在感を高めたいなら、通常のEQではなくUADの「Little Labs Voice Of God」を使ってみましょう。
これを使えば、信じられないくらい簡単にキックの厚みを出すことができます。
他にもWaves「Submarine」や「Renaissance Bass」でサブハーモニックを追加し、超低域の存在感を増す方法もあります。
3. 位相に気を付ける
キックを重ねる時に気を付けたいのが、「位相」の問題です。
上の動画では2:10から、キックを重ねた時に起こりがちな位相の問題について解説されていますね。
「キックを重ねると逆に音が細くなってしまう」という人は、もしかすると位相が影響しているかもしれません。
Melda Productionの「MAutoAlign」という位相補正プラグインを使えば、2つのオーディオファイル間でズレている位相を自動的に補正してくれるのでとても便利です。
よくキックやシンセを重ねるサウンドデザインの手法を使う人は、このプラグインを持っておいて損はないでしょう。
4. 音程を調整する
あまり意識しないかもしれませんが、キックにも音程があります。
もしあなたのDAWに、ギターのチューニングなどに使われるチューナーというプラグインが入っていれば、そのキックが「ド」なのか「ファ」なのかといった音程を確認することができます。
チューナーでも検出できないような低いキックなら、1オクターブ音程を上げてチューナーにかけてみてください。
もしこういったキックのチューニングが面倒なら、キック専用プラグインを使えば音程を指定することができるので、誰でも簡単に曲に馴染みやすいキックを作ることができますよ。
参考: 「BazzISM」| 図太いキックがつくれる隠れた名プラグイン – スタジオ翁
5. キック専用プラグインを使う
「Kick 2」や「Big Kick」といったキック専用プラグインを使えば、キックを細かく作り込むことができます。
「キックの音にもオリジナリティを出したい」「素早く理想のキックを作りたい」という人は、こういったプラグインを使ってみるのもいいですね。
先ほど紹介した「BazzISM」もかなりおすすめです。
参考: Big Kick – Plugin Boutique
6. 質の高いサンプルを使う
僕の経験談ですが、サンプルパックのキックはいまいち使い勝手が良くありません。
そのまま使うと、どうも細くて存在感が足りないんですよね。
こういったサンプルは重ねたり加工したりして、自分の好きなサウンドにしていくのも良いですが、質の良いサンプルパックを使えば問題は一気に解決します。
ハウスレーベルとして有名なKEINEMUSIKが出している「Werkzeug von David Mayer – KEINEMUSIK」は、そのままでも使えるキックやサンプルが多いので、かなりおすすめですよ。
7. モノラルにする
キックの低域は必ず「モノラル」にしましょう。
基本的に低域から高域に行くにつれて、「モノ→ステレオ」となるのが理想です。
ステレオ感はDAWに入っているステレオイメージャーなどで確認するか、なければ「StereoTool v3 – Flux」といった無料プラグインを使うのもアリですね。
中域〜高域にリバーブ成分があったりするキックもあるので、完全にモノラルにする必要はありませんが、「Ozone 9」や「bx_digital V3」といったツールを使えば、特定の低域だけをモノラルにすることもできます。
8. サチュレーションを使う
「サチュレーション」は、ひずみを与えることで音に存在感と適度なコンプ感を与えてくれます。
サチュレーションプラグインは本当にたくさんあるので、ここではすべて紹介式れきませんが、Fabfilter「Saturn 2」やSoundtoys「Decapitator」などは定番中の定番ですね。
参考: Soundtoys 「Decapitator」の特徴と使い方を解説!! – スタジオ翁
9. コンプで圧縮する
アタックが強すぎるキックはミックスのスペースを取りすぎるので、「コンプレッサー」で圧縮しましょう。
Black Salt Audio「LW CTRL」は、特定の低音だけを圧縮してエンハンスすることができるので、キック作りにおすすめのプラグインです。
ダンスミュージックでは、コンプ感のあるムチムチなサウンドが好まれます。
かといってコンプで潰しすぎると逆に低域のパワーが失われたりするので難しいところですが、音楽のジャンルによってそれぞれ適切なコンプ感があるので、お気に入りの曲を参考にコンプ量を調整してみて下さい。
キックのコンプ感は、iZotope「Tonal Balance Control 2」で確認するのがおすすめです。
10. トランジェントを調整する
今度は逆にアタック感が足りないという場合は、「SPL Transient Designer」などのトランジェントシェイパーを使って、アタック感を調整してみましょう。
アタック感をちょこっと調整するだけで、ミックス中での存在感がグッと高まるかもしれません。
11. ドラムマシンを使う
アナログドラムマシンはライブパフォーマンスにも頻繁に使われるくらいなので、ひとつひとつの音のクオリティがかなり高いです。
動画で紹介されているのは、ここ最近の定番機種「Roland TR-8S」ですね。
ドラムマシンは高いものだと20万円以上しますが、TR-8Sは品質が良いのにお手頃価格なのでめちゃくちゃおすすめです。
僕はクラブで何回もTR-8の音を聴いていますが、何も加工しなくても十分使えてしまうクオリティの高さですよ。
参考: ダンスミュージックに使える最高のドラムマシン7選 – スタジオ翁
12. ルームアコースティックを整える
ルームアコースティックとは、部屋鳴りのこと。
低音は部屋の大きさやスピーカーの配置で音がまるで変わってくるので、正しいモニター環境を作ることが大切です。
サブウーファーがあれば理想ですが、なかなか日本の住居環境で使うのは難しいでしょうね・・・
せめてスピーカースタンドを買ったり、吸音材を入れたりして部屋鳴りを整え、少しでもクリアな低域がモニターできるよう工夫してみましょう。
13. ヘッドフォンでミックスする
高価なスピーカーを買ったり、ルームアコースティックを整えるのが難しければ、良いヘッドフォンを買いましょう。
部屋に投資すれば数十万円〜数百万円かかるかもしれませんが、良いヘッドフォンへの投資は2〜3万円で済みます。
2〜3万円でおすすめのヘッドフォンはPHONON「SMB-02」、もっと高品質なものが良ければUltrasone「Signature Master」がおすすめです。
参考: Ultrasone「Signature Master」マスタリングにも最適な理想のモニターヘッドフォン – スタジオ翁
14. アナライザーを使う
キックはかなり低い音なので、正確なモニター環境かスペクトラムアナライザーがないとかなり調整しづらいです。
高性能なアナライザーは値段も桁違いなので、まずはVoxengo「SPAN」といった無料プラグインなどを使ってみると良いでしょう。
「低音がしっかり出ているか?」「ベースの帯域と被っていないか?」といったことを目で見てチェックすることができます。
15. 高域にも気をつかう
キックで大切なのは、低域だけではありません。
5kHzあたりの「クリック」または「ビーター」と呼ばれるアタック音は、キックを作る上でとても重要になってきます。
この高域が目立つほどキックの音は明るくなりますが、もしキックの抜けが悪いと感じているなら、低域よりも高域を調整した方が良い結果が得られるかもしれませんよ。
16. ローカットが有効な時もある
キックのローエンドには、余分な超低域の成分まで入っていることがあります。
キックが必要以上にブーミーだったり、たいして存在感もないのにやたらレベルメーターの音量だけ大きいキックなら、ローカットで低域を削ってあげることで逆にキックの存在感を高めることができるかもしれません。
超低域が大きすぎると、ミックスのスペースも取られてしまうので全体の音圧が上がらない原因にもなります。
17. 好きな曲から盗む
これは好きな曲で使われているキックをそのまま使うという、ゲスな方法です。
ほとんどのダンスミュージックは、イントロやアウトロでほぼキックだけのパートが存在しているので、その部分からキックを抜き取りましょう。
パーカッションなどがどうしても取り除けないなら、キックの低域成分だけいただいて、別のキックと合わせてオリジナルキックを作ってしまうというのもひとつの手ですね。
18. シンセでつくる
シンセサイザーを使えば、キックを自作することもできます。
僕は正直、シンセでキックを作るメリットを感じたことがありませんが、ソフトシンセやハードシンセを使ってオリジナルのキックを作ってみるという方法もあります。
上の動画では「Serum」というソフトシンセを使って、キックをデザインしている様子が観れますよ。
19. iZotope「Ozone」のImpactモジュールでトランジェントを整える
Ozone10から導入されたImpactモジュールを使えば、帯域ごとにトランジェントをコントロールできるので、キックのニュアンスを細かく微調整することができます。
Ozone 10は「9」と比べてもかなり進化していて、マスタリングを自分でしたいなら必ず入れておきたいツール。
残念ながら、Impactモジュールは最上位版の「Advanced」にしか入っていないのですが、買う価値は十分にあります。
参考: iZotope「Ozone 10」| ケタ違いにアップデートされたAIエンジンを搭載 – スタジオ翁
理想のキックを作るための19の方法 | まとめ
以上、キックをつくるための18のアイデアでした!
人によってキックの作り方はさまざま。
中にはアナログのテープマシンを通したり、いろんなプラグインを駆使してオリジナルのキックを作っているアーティストなんかも見かけますね。
気に入ったテクニックをうまく組み合わせて、理想のキックを手に入れて下さい。